平成21年1月17日

玉川上水整備活用計画策定に関する委員会

会長  篠原 修  様

「玉川上水整備活用計画策定に関する委員会」で協議中の
「名勝 小金井桜」に関する事項に対する要望について

名勝 小金井桜の会
会長  大久保 慎七

「玉川上水整備活用計画策定に関する委員会」において今年3月に、「名勝 小金井(サクラ) の再生に向けての具体的な整備計画の策定内容について言及した「整備活用計画」が提言として提 出されると聞き及んでいます。
私たちは、大正13年12月9日付で「史跡名勝天然記念物保存法」に基づき名勝に指定された、 歴史的文化遺産である小金井サクラのヤマザクラ並木を次代に適切に継承するため、その提言に 盛り込まれる名勝 小金井桜の再生に向けての具体的な整備計画の記述は、260余年の歴史を 誇るヤマザクラ並木を再び名勝と呼ばれるにふさわしい景観を取り戻せるか否かの重要な提言と して位置づけられるものであると認識しています。
以下、私たちのこれまでの活動の経験から名勝「小金井(サクラ)」の再生に向けての具体的事 項を指摘すると共にその内容が提言に盛り込まれるよう要望します。

1)名勝小金井桜は高木類による被圧、根元の踏み固め、自動車との接触被害、病害虫による被害等の各種の原因により樹勢の衰弱が急速に進行しつつあります。
現在でも毎年10本以上の桜樹が枯死又は伐採により減少していますが、最近の腐朽菌の発生状況の 調査結果からすると、今後さらに枯死樹の発生が加速されるのではないかと危惧されます。したがって 早急に樹勢に影響を与える要因を除去する対策を講じる内容を提言に盛り込むことを要望します。

2)名勝指定区間のヤマザクラ並木は名勝指定時の景観とは程遠い状況で、まったく名勝とは言いえない現状となっています。小金井桜の歴史を知らず、長年この現状を見慣れてきた人たちにとっては、かってこの場所が全国にも知られたサクラの名所であったことを想像することも難しいと思われます。例え全域でなく一部の区間であっても、芝地に桜の巨木が立ち並んでいた往時の面影を偲ばせる情景を再現することができれば、市民の関心を大いに高めることができるでしょう。
また同時に桜樹を被陰から開放することが、いかに小金井桜の保全に有効であるかが立証されるものと 期待しております。
以上からも重点整備地区におけるモデル事業に具体的区間を明示し、提言に盛り込むことを強く要望し ます。

3)これまで15回にわたって都・区市連絡協議会が開催されてきましたが、今後はよりきめ細かい、 例えば区間別の連絡会、部会などの設置が必要と思われます。市民と行政の役割分担をお互いに確認し 協働する仕組みを是非確立するよう希望します。
私たちはこれまでシンポジウム「玉川上水と小金井桜」(平成10年)、自主講座「地域の遺産を守る ー小金井桜」(平成17年)、小金井桜写真展(平成11年〜)、小金井桜今昔写真展(平成16年〜)、 名勝小金井桜落葉回収作戦(平成15年〜)、名勝小金井桜樹勢調査(平成14年〜) 等を共同でまた単独で実施又は継続実施中です。これらの活動によって私たちは微力ながら小金井及び 近隣の市民への「名勝小金井桜」の普及・啓発活動の一端を担ってきました。
このような活動或いは更に実践的な活動は今後整備活動が進行するに従ってさらに必要性を増してくると 思っています。このような活動を市民と行政の間で相互に関連しながら総合的に実施するための調整の場 ・協働の場の設置を提言に盛り込むことを強く要望します。

4)小金井桜の後継樹としての名勝指定区間の補植用の苗木は別紙「小金井桜補植用後継樹の選定」に 基づく名勝小金井桜に由緒のあるヤマザクラでなければならないと思います。
そのためにこの区間の周辺に専用の苗畑を設置し、所定の基準により選択された穂木を収集して育苗するか 、あるいは適当な相手先と提携して育苗を委託するなどの方策を提言に盛り込むことを強く要望します。

以上、『史跡玉川上水保全管理計画(平成18年6月 東京都水道局)』は、『名勝小金井(サクラ)現況報告書(平成7年3月 東京都教育委員会)』が刊行されて以来、私たちが待望してきたものです。
この保全計画に示された基本方針、方向性に基づいて策定される「整備活用計画」が、一日も早く年次スケジュールに従って着々と実施されることを期待しています。

連絡先   〒184-0003 小金井市緑町3-1-12
「名勝 小金井桜の会」事務局
小沼 廣和


別紙             小金井桜補植用後継樹の選定

名勝指定区間に植えつける桜樹の樹種は可能な限り名勝小金井桜に由緒のあるヤマザクラから選定したい。以下後継樹の候補について当会および関係者で調査した結果を列記する。

1)小金井桜の古木

名勝区間の小金井桜、特に古木のうち#119、#166、#659、#1103その他

2)小金井桜との関係が記録上明らかなヤマザクラ

イ)小金井市内に残る古木

嘉永2年の大補植の際に、この作業に参加した農家(某家)が記念のために自宅に植えたとの碑文付の古木が現存している。
市内にはその他「鈴木家のサクラ、国の天然記念物(枯死)」「鴨下家のサクラ」「笠森稲荷のサクラ」などの古木がある。

ロ)小金井公園の桜

昭和25年当時東京都の桜管理者塩谷格氏が東京都小金井苗圃において、三好学博士が分類命名された小金井桜の内残存していた9種について、各10本内外接木を行った(鐘き、山路、武蔵、三吉野、茜桜、朝日、内裏、入相、貫井)。この苗が小金井公園内に植えつけられた。(塩谷格氏 武蔵野手帳)

ハ)多磨霊園の桜

昭和5〜6年から7〜8年頃苗圃で接木した小金井山桜を霊園の表・裏参道両側に並木として植えた。(山田菊雄氏 「小金井の桜」)

二)神代植物公園の桜

園北側の調布市市道沿いの並木、昭和25年に名勝小金井桜の種子を拾い集め、育った実生苗の内から特別に美しい赤芽のものを選んで植えた。(「神代植物公園」p150〜151)

3)小金井桜のルーツ、吉野山又は桜川に由来するヤマザクラ

イ)吉野山の桜

町営の苗圃は台風により流失し、以来再建されていない。補植苗は花の会から入手している(吉野ヴィジターセンター談)。小学生が山内の種子を集めて校庭に植えて若木に育て、それを山に返している(鳥越皓之氏 花をたずねて吉野山)。

ロ)桜川の桜

桜川磯部稲村神社の境内に桜川匂、樺匂、初重桜、初見桜、大和桜、源氏桜、白雲桜、薄毛桜、青桜、青毛桜、梅鉢桜の11種の名花が保存されている。神社ではヤマザクラの実生苗を参詣者に頒布している。

4)その他小金井桜との関係付けが可能と思われるヤマザクラ

イ)北上市展勝地公園の小金井桜

岩手県北上市の立花地区にある北上市展勝地公園は大正10年、当時東京帝国大学教授であった三好学博士と東京市公園課長井下清技師両氏の計画指導に基づいて完成されたという。
同展勝地の記録では大正10年、東京ヤマト種苗株式会社より小金井山桜200本、同苗1000本他を購入したとあり、この小金井桜は展勝地公園内の陣が丘内に植えつけられたが、現在も約
80本が健在である。

以上

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